<早産と切迫早産>
日本の周産期死亡率は世界最低ですが、その死亡の7割以上が早産児で占められています。
早産を予防すること、切迫早産となってしまった場合には、最適な治療を行うことが大切です。
早産とは
正期産(妊娠37週0日~妊娠41週6日)より前の出産のことで、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を早産といいます。
妊娠22週で出産した場合早産となり、赤ちゃんの体重は500g前後で様々な機能が未熟であるため、
長期間の新生児医療が必要となります。
早産で生まれた赤ちゃんは時期が早い程死亡率が高く、救命されても様々な合併症にかかるリスクが高くなります。
出生時には、低体温、低血糖、貧血などになる場合があり、
合併症としては発育が不十分で生まれたことによる脳出血や呼吸器障害、
子宮内感染による脳性麻痺、敗血症、慢性肺疾患などがあります。
切迫早産とは
切迫早産とは、早産となる危険性が高い状態をいいます。
妊娠22週以降、37週未満に子宮の収縮が規則的かつ頻回に起こり、
子宮口が開いて子宮頸管が短くなり、赤ちゃんが出てきそうになる状態をいい、破水が起こることもあります。
早産は全妊娠の約5%に発生します。
早産のリスク因子として
1 過去の妊娠歴や産科合併症
早産や前期破水の既往、切迫早産の既往、頸管無力症
2 妊娠経過
多胎妊娠、前置胎盤、血腫、感染、羊水過多
3 既往歴、合併症
子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮形態異常、子宮頸部円錐切除術後、高血圧、膠原病
4 生活習慣
喫煙、アルコール、若年妊娠
などが挙げられますが、原因が明白ではない場合もあります。
早産の原因として過半数は感染によるものとされています。
絨毛膜羊膜炎は早産の原因として最も多く、細菌性腟症が原因となっています。
細菌性腟症から膣炎、子宮頸管炎、絨毛膜羊膜炎へ上行性に炎症が広がり、
それが原因で起こる前期破水や感染により子宮の収縮が起こってしまいます。
細菌性腟症は、妊娠可能な女性の10~30%がかかっているとされていますが、
大半は症状がなく、妊娠中の検診で分かることも多くあります。
診断された時点で早めに治療をすることで、絨毛膜羊膜炎へつながることを防ぎ、早産を予防します。
切迫早産の自覚症状としては、下腹部痛、出血、破水などがあります。
医療機関での診察で、規則的な子宮収縮、子宮口の拡大、頸管の短縮が認められた場合に切迫早産と診断されます。
診断されると、入院や自宅安静になり、妊娠週数、破水の有無、子宮内感染の有無、胎児の状態により治療法が決まります。
入院中は深部静脈血栓症発症に留意が必要です。
ただし、入院安静が早産予防に有効だという十分なエビデンスはないのが現状です。
<理学療法士の妊娠とトラブル>
また、私たち理学療法士の妊娠についても、様々な調査と報告がなされています。
先行研究では、職業をもつ女性はもっていない女性に比して、流産や死産の危険が大きいと報告があり、
立ち仕事や移乗、歩行の介助等がある理学療法士の仕事は身体的負担が大きいと考えられるため、
妊娠に関わるリスクは低くないといえます。
荒木らの報告によると、妊娠経過は48名中32名(66%)が「問題があった」と回答し、
内訳は重度悪阻、貧血、妊娠高血圧症候群、切迫流産、切迫早産、流産、早産であったとされています。
また、日本理学療法士協会の報告によると、
理学療法士として活動する経産婦の4人に1人が切迫流産を経験していた。
また、妊娠期に生理上・社会的・身体上・精神的な負担を7割弱が持ちながら仕事をしており、
妊娠期の情報提供などの支援も検討する必要がある、とされています。
理学療法士の女性の多くが、身体的、精神的負担を抱えつつ仕事をしているという現状です。
負担があっても、我慢して働いている、もしくは離職することが多いように感じます。
理学療法士は女性の割合が多く、平均年齢も若いため、今後妊娠・出産をする人口は増えていくと考えられます。
妊娠期において母親や夫など家族の理解やサポートも重要ですが、
妊娠・出産しても就労が継続できる職場環境作りを早急に行っていくことが重要だと考えられます。
女性理学療法士が長く就労することが出来るようになることで、
結果的にサービスの質の向上にもつながっていくのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました✨
ウーマンズヘルスケア研究会
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