脱水とは、体液が不足した状態のことをいいます。
体液は小児では体の約70%、成人では約60%、高齢者では約50%を占めています。
体液は①酸素と栄養素を体内に運搬する
②尿や汗として老廃物を体外に排出する
③発汗により体温を調節するという、重要な働きをになっています。
体液とは、水分に加え、ナトリウムやカリウムなどの電解質、タンパク質で構成されています。
電解質にはそれぞれ役割があり、常に濃度が一定となるようにバランスを保っており、
このバランスが崩れると様々な不調をきたしてしまいます。
体内の水分が2%失われ始めると、のどの渇きや運動機能の低下が起こります。
10%以上になると死に至る事もあるため、注意が必要です。
妊娠時には、つわりによる嘔吐や食欲減退、水分摂取の不足などにより脱水を来します。
初期だけではなく後期においても、子宮が大きくなり胃や腸を圧迫する事により、
吐き気や嘔吐をもよおすこともあるため、注意が必要です。
また、妊娠中は代謝系の変化があるため、基礎代謝が上昇するだけではなく、
胎児の成長に伴い糖代謝、脂質代謝、タンパク質代謝、水代謝などが変化するため、
汗をかきやすい状態となることも要因となります。
では、実際に妊娠中に必要な水分量はどれくらいなのでしょうか?
妊娠中は食べ物以外から、1日に2リットル摂取することが必要です。(非妊娠時1~1.5リットル)
赤ちゃんに送る血液量が必要であることや羊水に水分を使用すること、新陳代謝の増加、
などの理由により、非妊時と比較して多く摂取することが重要となります。
タイミングは、1度に大量摂取するのではなく、1回に付き100~200ml程度を頻回に摂取するのが良いとされています。
自覚のない脱水を防ぐためにも、のどが渇く前に飲むことが大切です。
では飲み物の種類はどうでしょうか?
コーヒーなどのカフェインを含む飲み物を好む女性はとても多いです。
カフェインは、神経の働きに影響を及ぼし、中枢神経の興奮を高め、
眠気を覚ましたり、利尿作用を発揮したり、血圧を高めたりなど、様々な働きがあります。
適切に摂取すれば、がんを抑えるなど、死亡リスクが減少する効果があるという科学的データもでていますが
、過剰に摂取し、中枢神経が過剰に刺激されると、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠が起こります。
消化器官の刺激により、下痢や吐き気、嘔吐する事もあります。
妊娠中にはカフェインを分解、排泄するのに時間がかかります。
また、カフェインは胎盤を通過するため、肝臓の機能が未熟な胎児の体内に高濃度のカフェインがとどまることになります。
カフェインは胎盤に流れる血液の量を減少させますが、
胎児の発育については関連があるのかははっきりしていないのが現状です。
しかし、報告によると、妊娠中にカフェインを飲む量が増えるほど、流産、死産、早産のリスクが高まる事がわかっています。
カフェインの摂取量が1日150mg未満の妊婦と比べて、300mg以上摂取する妊婦は流産のリスクが2倍、
コーヒー1日8杯以上で死産のリスクが高くなるという報告があります。
食品からのカフェイン摂取に関しては、国際機関などにおいては注意喚起等がなされています。
世界保健機構(WHO)は、2001年にカフェインの胎児への影響はまだ確定はしていないとしつつも、
お茶、ココア、コーラタイプの飲料はほぼ同程度のカフェインを含んでおり、
また、コーヒーはその2倍のカフェインを含んでいることから、
妊婦に対し、コーヒーを1日3~4杯までにすることを呼びかけています。
また、英国食品基準庁(FSA)では、2008年に妊婦がカフェインを取りすぎる事により、
出生時が低体重となり、将来の健康リスクが高くなる可能性があるとして、
妊娠した女性に対して、1日あたりのカフェインの摂取量を、
WHOよりも厳しい200mg(コーヒーをマグカップで2杯程度)に制限するように求めています。
これらのことにより、カフェインの過剰摂取には気を付ける必要がありますが、
基本的にカフェインは摂取量にさえ気を付けていれば、すぐに悪影響が及ぶというわけではないことがわかります。
飲む回数や量に気をつけることが大切ですね。
まずは、正しい知識を身につけて、快適なマタニティライフをすごしましょう。