妊娠してお腹が大きくなるにつれ、足元が見えず転倒してしまった…という妊娠中の女性もいらっしゃるかと思います。
妊婦の転倒は早期分娩や胎盤剥離、帝王切開への出産への繋がってしまうこともあるため、注意をしなければなりません。
では実際、どのくらいの頻度で転倒が起こり、どのような場面に注意が必要なのでしょうか。
米国での転倒調査では、働いている妊婦の約25%に転倒経験があり、
65歳以上の高齢者における転倒に匹敵すると報告されています。
日本でも19.9%の発生率であるとの報告があります。
発生時期は、①妊娠中期、②妊娠後期での件数が多いとされています。
妊娠経過に伴い、姿勢制御能力の低下があるため、
小さな外乱であっても容易にバランスを崩してしまうことが原因とされています。
転倒時の動作は、歩行時の転倒が約3割を占め、他は階段昇降や立つしゃがみなどの動作で発生しています。
妊婦の歩行の特徴としては、①前額面で臀部を左右にふるようなアヒル様歩行、②体幹後屈位が挙げられます。
妊婦は、お腹が前上方に向かい大きくなることで、身体重心も前上方へ変位するため、
そのバランスを取る様にして体幹後傾位をとるような立位姿勢となります。
また、多くの方は、股関節外転外旋位にて支持基底面を大きくすることで、安定性を確保しようとします。
妊婦は歩行速度、歩幅、歩行率が減少し、歩隔が増加します。
歩行時において左右の足を開き、歩隔を増大することで、左右方向の姿勢制御を行います。
これらの姿勢変化に伴い、立脚期には股関節屈曲、外転、足関節底屈、体幹前屈モーメントが増加します。
それにより、足関節底屈筋群、体幹全面と大腿前面を連結する筋群、
股関節外転筋群の負荷量が増加し、疲労を起こしやすくなります。
そのため、トゥクリアランスの低下を引き起こし、つまづき、転倒しやすくなります。
また、滑った時など外乱刺激に対応することが必要な場合には、急速な立ち直り反応とステッピングが要求されます。
しかし、妊婦は急激なステッピングが難しいことに加えて、腹囲の増加により足元が見えにいことや、
トゥクリアランスの低下により滑る事やつまづきでの転倒が起こりやすいのが現状です。
妊婦2000人を対象にしたアンケート調査では、妊娠期間中の日常生活動作に不安定感を感じる妊婦は全体の72.1%に上ります。
不安定感を感じやすい動作としては、階段昇降や立ち上がりなどの抗重力・従重力動作が多く、
実際には歩行ではほとんどが不安定感を感じていない、という結果になっています。
歩行動作は上下の重心制動より、水平方向の重心制動がほとんどである為、
不安定感を感じにくいのではないかと言われています。
しかし、実際の転倒時の動作としては、歩行時の転倒が約3割を占めている状態です。
妊娠すると、体重増加や筋力の低下、姿勢制御能力の低下やトゥクリアランスの低下により
非妊娠時と比較して、歩行時に転倒しやすい状態です。
つまづく、滑るなどの転倒を防ぐために、まずは妊娠中の女性には転倒しやすい状態であること、
そのリスクを自覚してもらい、歩きやすい靴を選択する、重たい物を持って歩かない、
足場の悪い所にはいかないなど、普段から心がけて頂く必要があります。
また、必要性に応じて、環境設定や動作指導をしていく事も重要なのではないかと考えます。
最後までお読みいただきありがとうございました✨
ウーマンズヘルスケア研究会
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