多くの妊婦さんが経験したことがある、つわり。
多くは一過性のもので、妊婦さんの50~80%に悪心・嘔吐が認められますが、
これらの症状が悪化して脱水症状や栄養障害を来した状態を「妊娠悪阻」といいます。
妊娠悪阻は、①悪心・嘔吐の遷延化、②5%以上の体重の減少、③尿ケトン体値の陽性
の3つが主な診断基準となります。
妊娠悪阻では糖質の摂取不足から代謝異常を生じ、その結果ケトン体の産生が促進し、血中・尿中ケトン体が増加します。
ケトン体は飢餓の警告サインであり、治療開始の指標ともなります。
また、嘔吐などにより、電解、酸塩基平衡の異常やビタミンB1、ビタミンK不足を生じます。
妊娠悪阻の症状は、段階的に悪化するため、可能な限り早めに対処することが大切です。
1期:
嘔吐を繰り返し、摂食障害がみられる。脱水による口渇、だるさ、めまいが起こり、体重減少が始まります。
2期:
飢餓状態でエネルギー源であるブドウ糖の不足により体内の脂肪をエネルギーとして分解するため、
血中・尿中のケトン体の増加と低たんぱく血症が起き、ビタミンB1も不足します。
脱水状態となり、深部静脈血栓症のリスクも高まります。
3期:
血液循環の悪化による肝・腎障害や、ケトン体の増加による代謝性アシドーシス、
低たんぱく血症による胸水・腹水の貯留をみとめるようになります。
4期:
ウェルニッケ脳症を引き起こし、生命に危険を及ぼす恐れがあります。
妊娠悪阻を放置するともっとも怖いのが、ウェルニッケ脳症です。
ウェルニッケ脳症は、重症妊娠悪阻による食事摂取不能やビタミンB1不足が原因とされており、
眼球運動障害、失調性歩行、意識障害など神経症状や特異的な健忘症状を呈します。
ウェルニッケ脳症は発症頻度は0.1%~0.35%と高くはないものの、
発症すると病勢は不可逆的といわれており、死亡率4.8%、神経学的後遺症90.5%ときわめて重篤な予後をしめします。
救命あるいは改善しても、ウェルニッケ・コルサコフ症候群という記憶障害が残る可能性が高くなります。
報告によると、発症時期は平均13.9週で、発症年齢は平均28.6歳、初産婦(36%)よりも経産婦(64%)に多くみられます。
妊娠悪阻症状出現から発症までの期間は平均で5.2週、非妊娠時からの体重減少は平均で13.6㎏とされています。
重症妊娠悪阻の治療中に起こるウェルニッケ脳症は、ビタミンB1の摂取や補充により予防が可能な病気です。
死亡率は減少していますが、後遺症が残る可能性が高く、何よりも予防を行う事が重要となります。
そのためには、
「嘔吐を繰り返す」「ご飯が食べられない」「水分が取れていない」「体重の減少がある」などというときには、
まずはかかりつけの医療機関に速やかに相談し、状態に応じた適切な処置を行うことが重要になります。
妊婦さんに関わる場合、つわりには個人差がありますが、精神的なものとして我慢したり、
自己判断をしないように、アドバイスが出来る様にしたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました✨
ウーマンズヘルスケア研究会
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