妊産婦さんに介入する場合に注意すること~深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症~

妊娠は血栓症の危険因子であることが知られています。

血栓症は表在性と深部性に分けられます。

 

○表在性静脈血栓症

表在静脈に最も多く発生し、一般的に軽傷です。

皮膚のすぐ下にある静脈に沿って、足関節の内側から膝関節の内側にかけて発赤、熱感、疼痛を認めます。

 

表在静脈血栓症では、急性の炎症症状のため血栓が静脈壁にしっかりと付着し、

深部静脈と違って筋肉に取り囲まれておらず、血栓が押し出される事はありません。

 

 

○深部静脈血栓症

下肢および骨盤内などの深部の静脈に血栓が生じた状態をいいます。

この血栓が遊離して肺動脈を閉塞する事により呼吸循環障害を生ずる病態を、肺塞栓症と言います。

この二つを総じて静脈血栓塞栓症といいます。

 

症状として、下肢の腫脹、圧痛、発赤などがあり、肺塞栓症では呼吸困難、胸痛や失神などを認めます。

肺塞栓症は深部静脈血栓症の5~10%に発症し、症状は重篤なため、迅速な対応が必要です。

 

妊娠中には血栓症の発症率は、非妊娠時と比較して、5倍以上にもなると言われています。

 

妊娠・出産において血栓症リスクが高まる原因として、

 

1 出産時に多量の出血が見込まれるため、妊娠後期になると血液の凝固機能が高まる

2 腹部の増大により、腹腔内の静脈が圧迫され、血流が悪くなる

3 妊娠によりエストロゲンの分泌量が増える

4 妊娠により血液量が非妊娠時の約1.4倍となり、血小板や白血球の数も増えるため、凝固機能が高まる

 

などが挙げられます。

 

また、産褥期には、妊娠中よりも血栓症発症リスクは高くなります。

分娩直後には一旦低下しますが、分娩後の数日間に発症リスクは高まります。

 

その理由としては、経腟分娩であれば飲水量の低下や発汗による血液濃縮、

帝王切開では飲水制限や下肢の運動制限などが挙げられています。

 

ある調査では、帝王切開では経腟分娩と比べ肺塞栓症の発症率が22倍にもなるとされており、

帝王切開後は特に注意をする必要性があり、脱水の回避・改善や早期離床などの予防が重要になります。

 

静脈血栓塞栓症のリスク因子としては、

 

・高齢妊娠(35歳以上)

・肥満妊婦(妊娠後半期のBMI 27以上)

・重症妊娠悪阻、切迫流早産、重症妊娠中毒症、前置胎盤、多胎妊娠などによる長期安静臥床

・産褥期、とくに帝王切開術後

・常位胎盤早期剥離、子宮内胎児発育不全の既往

・血液濃縮

・卵巣過剰刺激症候群

・著明な下肢静脈瘤

 

などが挙げられます。

この他にも、一般的な静脈血栓塞栓症のリスク因子も考慮する必要があります。

 

妊産婦さんに介入する場合には、上記を把握した上で対応し、

まずは、発症を予防出来る様に指導を行っていくことが大切ですね。

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました

 

 

 

  

ウーマンズヘルスケア研究会

 

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