近年、気管支喘息の有病率は増加しています。
気管支喘息は、気道に炎症が続き、さまざまな刺激に気道が敏感になって
発作的に気道が狭くなることを繰り返す状態をいいます。
日本では子供の8~14%、大人では9~10%に気管支喘息があるといわれています。
高年齢で発症する場合もあります。
原因はチリダニやハウスダスト、ペットのフケ、カビなどのアレルギーによることが多いのですが、
その原因物質が特定できないこともあります。
近年では、妊娠可能年齢の女性の喘息罹患率は世界的にも増加しており、
喘息は妊娠に合併する頻度の高い慢性疾患の1つであり、妊婦の3.7~8.4%が喘息に罹患しているといわれています。
喘息がコントロールされていない場合、早産や低出生体重児の増加などが認められています。
その原因として、最近の研究では喘息に対する治療薬剤の影響は殆ど認められず、
喘息発作による母体および胎児の低酸素血症の影響が重要視されています。
妊娠中の治療や薬剤服用は危険と考えられがちですが、
喘息を合併する妊婦の場合は安全性の確認された必要最小量の薬剤による治療が妊娠合併症を予防し、
無治療で放置した場合よりも母体および胎児にはるかにメリットが大きいとされています。
実際に、米国の調査では、妊娠期間中に4.1%の妊婦が喘息発作を起こしたが、
妊娠前より治療を受けていた場合でも妊娠中にその薬剤を使用したのは半数であったとの報告があります。
また、妊娠17~24週に喘息発作が最も多くみられるとされていますが、
その理由として、この期間の治療の中断や治療薬の減薬を行ったことが原因との報告もあります。
アドヒアランスの低下により、妊娠中に必要な治療を行わない事で、喘息のコントロールが不十分な場合、
周産期死亡率の増加、妊娠高血圧症、妊娠中毒症、早産、低出生体重児などの妊娠合併症の発生リスクが増加します。
喘息は妊娠中に悪化、改善、不変症例が3分の1ずつとする報告が一般的ですが、
妊娠前より十分なコントロールを行っておくことや、
薬剤に対する不必要な不安による治療を中断しないことなど、適切に管理を行っていく事が重要です。
妊娠中はホルモンの変化、子宮拡大に伴う解剖学的変化、基礎代謝率の変化により呼吸機能は変化します。
横隔膜は増大する子宮からの圧迫により平坦化し、横隔膜は4cm拳上、胸部横径は約2cm拡大、胸囲は約6cm拡大します。
基礎代謝の亢進(8~15%)により、酸素消費量が増加し換気量も増加します。
また、横隔膜の平坦化、胸郭可動性減少により、呼吸機能の低下が起こりやすく、呼吸困難症状を自覚しやすくなります。
また、血中プロゲステロン濃度の増加も影響し、分時換気量は増加、それにより胎児への酸素供給を保ちます。
分時換気量が40~50%増加するため、過換気となり、母体血中の二酸化炭素分圧は低下し、呼吸性アルカローシスに傾きます。
気管支喘息発作により母体が低酸素血症となることで、胎児の低酸素血症を誘発します。
さらに過換気が進むと、低炭酸ガス血症となり、子宮動脈の収縮により胎児の血流低下にもつながります。
これらの変化により、胎児の生命は危険にさらされます。
推奨される妊娠中の喘息管理法は、米国喘息患者教育・予防プログラムにおいて掲示されています。
胎児の正常な成長だけではなく、母親の健康と生活の質を確保するために、
喘息を持続的にコントロールし、最適な治療を提供することを目標としています。
・日中または夜間の慢性症状がほとんどない
・増悪がほとんどない、またはない
・活動に対する制限がない
・肺機能がほぼ正常に維持されている
・短時間作用型吸入β2刺激約の使用がわずか
・薬物による有害作用がわずか、またはまったくない
これらを目標とします。また、主な柱として、次の項目が挙げられます。
1) 肺機能の客観的測定を含む喘息の評価とモニタリング
2) 喘息重症度に寄与する因子の制御
母体の喘息症状を安定させるため、重症化に寄与する因子を同定、回避することを進めています。
また、母親の喫煙により子供の喘息リスクが高まる事が報告されており、禁煙をすすめ、
間接喫煙を可能が限り回避するように勧めます。
3) 患者教育
喘息の症状を放置し増悪をきたすよりも、喘息治療薬を服用した方が安全であることを理解させ、
母体と胎児が低酸素状態にならないようにするため、患者自身が喘息の徴候を認識し、
速やかに対応できるようにする必要があります。胎動の低下が初期発現である場合もあります。
4) 薬物療法の段階的なアプローチ
欧米の研究では喘息妊婦でも十分に発作をコントロールし、
計画的に妊娠、出産した場合は合併症の増加が無いこともわかってきています。
その都度、適切な治療や服薬を受け、健やかに過ごすことが出来るように、
まずは正しい情報を知る事が重要ではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました✨
ウーマンズヘルスケア研究会
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