10か月の妊娠期間を経て、ママの体は大きく変化をいます。
妊娠・出産は病気ではありませんが、正常な状態ではなく、全身状態は大きく変化しています。
出産したからといって、すぐに妊娠していない時の身体に戻るわけではありません。
出産にて身体は大きなダメージを受けており、産褥期での回復を経て、徐々に非妊娠時の状態へ戻っていきます。
非妊娠時の子宮は、縦の長さは約7㎝、横の長さは約3~4㎝、重さは約40~50g程度で、鶏の卵くらいの大きさです。
それが妊娠後期になると、縦の長さは約36㎝以上、横の長さは約24㎝、重さは約800~1,000gとなり、
長さや幅は約5~6倍、重さは約20倍にもなり、容積と重量が増大します。
腹直筋は15cm程長くなると言われており、内腹斜筋、外腹斜筋、
腹横筋などの側副筋群も引き伸ばされ、筋厚は薄くなっていきます。
骨盤底筋は、骨盤内臓器をハンモック状に支持しています。腹圧の上昇に合わせて収縮し、骨盤底を支持します。
妊娠期間中、胎児の成長に伴い子宮の容積や重量が増大すると、
骨盤底には持続的に負担がかかり、引き伸ばされ、脆弱化してしまいます。
そこに分娩が加わると、筋群の断裂や神経損傷を起こすこともあり、骨盤底へのダメージは相当なものです。
また、胎児が大きくなるにつれて、大きく引き伸ばされる腹直筋が白線上で左右に離開する事があります。
これを腹直筋離開といいます。
腹直筋離開が重度の場合には腹横筋の収縮が入りにくくなるため、
コアユニットが上手く働かず、腹圧をうまくコントロールできなくなる事があります。
正常な状態であれば、咳をしたり、腹圧がかかるような動作をした場合、腹圧の上昇に合わせてコアユニットが働きますが、
上記の理由により、妊娠中や産後には、コアユニットの働きが不十分となる為、過度な腹圧をかける事で、
脆弱化した腹部や骨盤底への負担を増強させてしまいます。
その結果、尿漏れや腰痛、骨盤帯痛などのマイナートラブルを引き起こしてしまうのです。
それでは、そうならない為、妊娠中や産後の女性にアドバイス出来る事はあるのでしょうか?
●脊柱後弯、骨盤後傾位での座位を避ける(ソファーにもたれる、椅子に浅く座る)
ありがちな姿勢ですが、この姿勢で長時間座ると、骨盤底への腹圧のベクトルが上昇するため、骨盤底への負担が増強します。
椅子に座る場合は深く腰掛けるか、背中にクッションなどを用いて、骨盤を起こし脊柱の伸展を促すことが大切です。
また、授乳時には授乳クッションなどを用いて、前かがみとならない様に脊柱の伸展を保持することや、
座面の高さが高い場合には、足置きなどを用いる事も有用です。
●床での生活で、床に座る場合は座り方に気を付ける
足を組む事や横座りは骨盤の歪みや股関節の左右差に加え全身の歪みを引き起こすため、行わない方が良いです。
また、割座も、股関節内旋位を助長するため行わない方が良いです。
あぐらや正座はいいと言われています。
骨盤後傾位とならず、楽に座れるように、お尻にバスタオルなどをはさみ、骨盤を自然と起こすことも有用です。
●前かがみの動作をする際に、背中から丸まらないようにする
(赤ちゃんを抱きかかえる、オムツ換えなど)
上記と同じく骨盤底への腹圧のベクトルの上昇を防ぐため、上半身は伸展位を保持するようにし、
股関節を屈曲して動作を行うように促します。
床から立ち座りをする際は、片膝を立てて動作をするのも有用です。
●ベッドや布団から起き上がる場合は、腹筋運動のように、そのまま上半身をおこさないようにする
カールアップと呼ばれる腹筋運動を行うと、腹直筋離開への負担が増大するとともに、脆弱化した骨盤底へも負担がかかります。
起き上がる際に上半身をそのまま起こすと、腹筋運動と同じような状態となります。
過度な腹圧がかからないように、一旦側臥位を経て起き上がる方法などが良いです。
このように、過度な腹圧の上昇を防ぎ、スムーズな母体の回復を促す為に、
普段の姿勢・動作から注意していく点は沢山あります。
クッションなどを用いて無理のない様に、正しく楽な姿勢・動作が出来る様に、セラピストが指導できることが大切ですね。
最後までお読みいただきありがとうございました✨
ウーマンズヘルスケア研究会
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