子宮内膜とは、受精卵が着床する組織で、月経の際に剥がれ出血とともに膣からでてくる、子宮内側の組織をいいます。
子宮内膜症とは、本来子宮内にあるべき子宮内膜に似た組織(子宮内膜症組織)が、子宮以外の場所に発生して、月経が起こるたびに増殖・悪化していく病気です。
子宮以外に出来た子宮内膜にも、本来の子宮の周期と同様の変化が起こります。
月経が起こると、子宮以外に出来た子宮内膜も剥離・出血しますが、血液や内膜を体外に排出することが出来ず、体内に溜まってしまいます。
そして体内で炎症をおこし、周辺組織と癒着をして、痛みや不妊の原因となります。
以前は30代~40代に多くみられる病気でしたが、現代女性は初経の年齢も低下している為、最近では10代~20代の女性にも増えています。
また、晩婚・晩産化、少産化傾向にあり、閉経も遅くなっていることから、生涯の月経回数が格段に増えています。
子宮内膜症の原因は月経であるため、現代女性は子宮内膜症を発生しやすい環境にあるといえます。
子宮内膜症の罹患は年々増加しており、日本人女性の10人に1人が子宮内膜症と言われています。
現在患者数は260万人といわれていますが、月経困難症と同様、治療をうけている人はわずが10%程度であるといわれています。
子宮内膜症の症状は様々で、
月経痛、月経時以外の下腹部痛、腰痛、レバー状の塊がでる、排便痛、腹部膨満感、疲労感、性交痛、月経量が多い、不妊状態などがありますが、
子宮内膜症協会の2006年調査によると、月経痛を有するとの回答は約90%にものぼり、月経痛は重要な病気のサインといわれています。
特徴的な症状は痛みと不妊といわれています。
痛みの強さは病巣が来る場所により、異なります。
発生しやすい場所はさまざまで、卵巣や子宮、ダグラス窩、腸や直腸の表面、卵巣の内部、子宮の筋肉層、腹膜表面などが挙げられます。
ダグラス窩に発生した子宮内膜症は特に痛みが強く、癒着が進むと性交痛や排便痛を生じます。
また、子宮内膜症による様々な障害が妊娠を阻害する要因にもなっています。原因不明の不妊女性の約半数は子宮内膜症があるともいわれています。
また、痛みによりQuality of life(生活の質)の低下をきたすことも、深刻な問題とされています。
子宮内膜症は5種類に分けられます。
1 腹膜子宮内膜症
2 卵巣チョコレート嚢胞
3 深部子宮内膜症
4 子宮腺筋症
5 他臓器子宮内膜症
子宮内膜症は良性腫瘍ですが、チョコレート嚢胞患者の卵巣がん発症率は、約8倍にものぼるといわれており、高いリスクを認めます。また、チョコレート嚢胞と卵巣がんの発症率も年齢とともに高くなるため、あなどれません。
子宮内膜症を疑うサイン
・鎮痛薬が効かないほど月経痛がひどい
・徐々に月経痛がひどくなっている
・月経以外の時も下腹部痛がある
・性交時に腰が引けるほど痛い
・排便の時にいたみがある
・肛門の奥の方が痛い
・なかなか妊娠できない
子宮内膜症では、月経痛が病気を知らせる重要なサインです。
痛みを我慢し、知らず知らずの間に症状が重症化することもあります。
月経痛以外でも上記の症状に一つでもあてはまれば、産婦人科の受診をする事をお勧めします。
子宮内膜症は慢性の進行性の病気です。
正しく知識をもって、症状を重症化させずに健やかに過ごしていくために、適切に対処していくことが大切ではないでしょうか。