更年期障害という言葉は目にし、耳にすることは多いと思います。
更年期障害という言葉や症状は何となく知っていても具体的なことはよく分からない人も多いのではないでしょうか。
今回は、更年期障害についての具体的な内容だけでなく男性にもおこりうる更年期障害も含めて以下の順番で説明したいと思います。
◼︎更年期障害とは
◼︎更年期障害の原因
◼︎更年期障害の症状
◼︎更年期障害の類似症状
◼︎更年期障害の治療
◼︎男性の更年期障害
◼︎更年期障害とは
私たちの排卵される卵子の数は決まっており、歳を重ねるとともに正常な機能をもつ卵胞は減少していきます。
日本婦人科学会によると、
卵巣の活動性が次第に低下し、月経が永久に停止することを「閉経」といいます。
一般的には12か月以上月経がない場合を閉経とします。
日本人の平均閉経年齢は約50歳ですが、個人差が大きく早い人で40歳前半の方もいます。
閉経した時から前後の5年間を「更年期」といいます。更年期は成熟期と老年期のあいだの移行期であり、卵巣機能が減退し消失するまでの期間のことです。
この期間で現れるさまざまな症状のなかで器質的変化に起因しない症状を「更年期症状」といい、
その中でも症状により日常生活に支障をきたすものを「更年期障害」とよびます。
◼︎更年期障害の原因
更年期障害の主な原因としては、卵巣機能の低下に伴うエストラジオールの減少、
黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモンの増加による自律神経中枢への影響と考えられています。
また、ホルモンの影響だけでなく更年期では、自分自身や家族の環境の変化もあり,
心理社会的背景や心身の変化などが複合的に影響することで症状がでると言われています。
◼︎更年期障害の症状
更年期における諸症状は大きく分けると自律神経失調症状、精神神経症状、その他の3つに分けられます。
①自律神経失調症状
・血管運動神経症状:のぼせ感、発汗、冷え、寒気、動悸など
・胸部症状:息苦しさ、胸痛など
・全身的症状:肩こり、眩暈、疲労感、頭痛など
②精神神経症状
・情緒不安定、イライラ、起こりっぽいなど
・抑うつ気分、意欲の低下、涙もろいなど
・不安感など
③その他身体的症状
・消化器症状:便秘、下痢、吐き気、食欲不振など
・運動器症状:むくみ、腰痛、関節痛、筋肉痛、しびれ、手のこわばりなど
・皮膚粘膜症状:乾燥、かゆみ、湿疹、蟻走感など
・泌尿生殖器症状:頻尿、排尿障害、外陰部違和感など
諸症状ありますが中でも特徴的なものはホットフラッシュになります。
ホットフラッシュとは、①の自律神経失調症状の中の血管運動神経の障害により起こり、のぼせ感や急に顔がほてったり汗が出たりする状態になることをいいます。
また、日本人女性における発症頻度としては肩こり、易疲労感、頭痛、のぼせ、腰痛の順で高いとのことです。
これらの更年期症状が起こることで日常生活に支障をきたす程度になると更年期障害となります。
◼︎更年期障害との類似症状
更年期障害とは最初にもあげた通り、器質的変化に起因しない症状です。
自律神経失調症、機能性頭痛、腰椎椎間板ヘルニア、腰椎すべり症、甲状腺疾患、気分障害、不安障害など上記にあげた症状と類似するものは沢山あるため、器質的変化によるものがないが除外診断を行うことも重要です。
◼︎更年期障害の治療
治療としては、薬物療法や精神心理療法、運動療法、食事療法などがあります。
・薬物療法
薬物療法は、低下・不足しているホルモンを補うホルモン療法、漢方などがあります。
ホルモン療法はETというエストロゲン単独のものとERTというエストロゲンとプロゲスチン併用するものがあり、前者はうつや不安などを避けますが、子宮内膜の過形成や子宮体癌においてリスクが上昇するとの報告もあり主に子宮摘出後の方が適応となります。
ホルモン療法自体も高血圧の方の脳血栓リスクが高まったり、卵巣癌ではリスクが上昇する一方で大腸癌や直腸癌のリスクは低下するとの報告もあり、癌の部位や症状などその方それぞれに合わせて適応を決定していく必要があります。
・精神心理療法
抑うつ傾向の方やストレスに弱い方または閉経にネガティブな印象をもっている女性は症状を認めやすいとの報告があります。必要に応じて認知行動療法などを行います。
・運動療法
定期的な運動により、ストレス解消の効果や運動器疾患など器質的症状の予防にもつながります。
また有酸素運動により更年期症状の軽減が期待できるとの報告もあります。
・食事療法
タンパク質、ビタミン、カルシウム、鉄など不足しがちな栄養をしっかりと摂ることです。バランスのとれた食事を意識することで症状の軽減につながります。
また、大豆に含まれるイソフラボンはエストロゲンの作用があり更年期症状の改善が期待できます。
◼︎男性の更年期障害
男性の更年期障害が起こる時期は、個人差があり男性ホルモンが低下する40歳以降は起こる可能性が高くなります。
男性ホルモンは全身に作用し認知機能にも関わるため多岐多様な症状を認めます。
症状としては女性の更年期症状と同様の症状も認めますが、男性ホルモンであるテストステロンは肥満を抑制する働きもあるため低下すると太りやすくなります。
治療は女性と同様にホルモン補充療法や精神心理療法、運動療法、食事療法があげられます。
また分泌を高めるために睡眠をしっかりとること、競い合うことなどがあげられます。