妊娠中は運動ってしていいの?

近年では、マタニティヨガ、マタニティスイミングなど、妊婦の方も行う運動を良く耳にするかと思います。

妊娠中の適度な運動は、妊婦の健康の維持・増進にとても役立つものです。

 

しかし、妊娠経過に伴い、ママの体は生理学的・解剖学的にも大きく変化します。

もちろん、ママの体の状態は、お腹の赤ちゃんにも影響をもたらします。

 

妊婦、胎児に対して、安全管理を十分に行った上で運動を行うことが出来るように、正しい知識を持っておくことはとても大切です。

 

妊婦の運動は、妊娠中の健康の維持・増進が目的であるため、現在の妊娠経過が順調であることが重要な条件です。

日本臨床スポーツ医学会が示す「妊婦スポーツの安全管理基準」では、以下の項目を挙げています。

 

◇スポーツを行う上での母体、胎児の条件

・現在の妊娠が正常で、かつ既往の妊娠に早産や反復する流産がないこと

・単胎妊娠で、胎児の発育に異常が認められないこと

・妊娠成立後にスポーツを開始する場合は、原則として妊娠12週以降で、妊娠経過に異常がないこと

・スポーツ終了時期は、十分なメディカルチェックのもとで特別な異常が認められない場合は、特に制限はしない

 

妊娠中に運動を行うことにより,特に子宮収縮誘発による流産・早産と,子宮血流量減少による胎児低酸素状態が問題となります。

そのため、流産・早産をおこしやすい妊婦は運動を行うべきではなく,妊娠経過に異常がないことが必要であり,子宮胎盤循環が障害されているような場合は行ってはなりません。

 

 

◎妊娠スポーツの禁忌

●全体的禁忌

心疾患、破水、早期の陣痛、多胎、出血、前置胎盤、頸管無力症、3回以上の自然流産

●相対的禁忌

高血圧、貧血または他の血液疾患、甲状腺疾患、糖尿病、動悸または不整脈、妊娠末期の骨盤位、極端な肥満、極端なやせ、

早産の既往、子宮内発育遅延の既往、妊娠中出血の既往、極端に非活動的な生活習慣

 

 

◇環境

極端な体温上昇は胎児に影響があるとも言われており、真夏の炎天下など暑すぎる状態を避ける必要があります。高温多湿下での運動は避けるようにします。

妊婦は身体機能の変化により転倒のリスクが高くなっていることと、過度な足腰への負担により腰痛など整形外科的な障害を引き起こす可能性があるため、

足場が悪い、又は不安定な場所での運動は行わないようにします。

 

◇運動の種目

好ましい運動:水泳、エアロビクス、ウォーキング、ヨガ

好ましくない運動:柔道、空手、ホッケー、ボクシング、レスリング、バスケットボール、サッカー

危険な運動:体操競技、乗馬、重量挙げ、スキー、スケート、ハンググライダー、スキューバダイビング

 

有酸素運動、かつ全身運動で、楽しく長続きするものが望ましいとされています。

しかし、柔道や空手などの格闘技はもちろん、バスケットボールやサッカーなど競技性が高いもの、腹部に圧迫が加わるもの、瞬発性のもの、

転倒の危険があるもの、相手と接触したりするものは避けるようにします。

妊娠16週以降は、子宮の増大により下肢の静脈還流が悪化し低血圧が起こる、仰臥位低血圧症候群になる可能性があるため、仰臥位になるような運動は避けます。

 

◇メディカルチェック

運動を行うことで、約10 %に腹部緊満感が出現しますが、殆どは生理的なもので治療の必要はありませんが,

中には子宮収縮や出血を伴い治療を行う必要があることもあるため、運動前後でのメディカルチェックは重要となります。

個人で運動を行う場合は、運動前後に心拍数を測定し、終了後後には子宮収縮や胎動に注意することが重要です。

どのような運動でも、胎児がストレスと感じた場合,運動後に胎動が減少します。

妊娠中期から後期における目安は,運動終了後の30 分間で,正常な場合は少なくとも1 ~ 2 回以上の胎動が出現します。

 

◇安全な運動の強度

心拍数で150bpm以下、自覚的な運動強度としては「ややきつい」以下が望ましいです。

連続運動を行う場合には、自覚的な運動強度としては「やや楽である」以下とします。

運動強度が強すぎると、子宮血流量低下をきたし、胎盤での酸素不足から胎児低酸素血症の危険が考えられます。

妊婦が不安なく、心地よくスポーツが出来る範囲が最も良いとされています。

 

◇実施時間

子宮収縮する頻度が少ない時間帯とされている、午前10時から午後2時の間が望ましいとされています。

頻度は週2~3回で、長時間の運動は負担になるため、1回の運動時間は60分以内とします

 

◇妊婦の運動の効果

理想的な体重の維持:糖尿病の発症予防、血圧のコントロール

妊娠中の症状の軽減:腰痛、頭痛、倦怠感、しびれ、むくみ、静脈瘤、便秘の改善など

安産傾向:筋力の維持、骨盤底筋のリラックス、呼吸法の体得、分娩時間の短縮、小さめの新生児

精神面での安定と自信:ストレス発散、爽快感、マタニティブル-ズの予防

 

 

上記のように運動をすることにより良い効果がもたらされますが、同じ妊婦といっても、個人個人で状態は様々です。

健康増進のために始めた運動も、トラブルを起こしては本末転倒になってしまいます。

運動を始める際には、主治医に相談し、適切なアドバイスと許可をもらうようにし、健康で快適なマタニティライフを送りましょう。

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました

 

 

 

  

ウーマンズヘルスケア研究会

 

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